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Bad dream
昨日教授秘書から連絡があって、今日の教授のプライベート症例(77才、大動脈基部置換)、彼が忙しいので代わりにしてくれと頼まれました。
基部置換は僕自身あまり経験がないのでプレッシャーを感じていたら、案の定昨晩夢に出てきました。

大動脈弁輪が非常に小さくて弁輪拡大をしようとしたらクチャクチャになってしまい、修復しようとしたらプロリンの糸が見つかりません。看護師さんが30分以上走り回ってやっと見つけたものの、時計を見るとすでに2時間近くも心臓を止めていたことに気づき、焦って頭の中が真っ白になってしまうという夢でした。

有り得ない話ですが、何か妙にリアリティーがあって朝の5時前に目が覚めてしまいました。
何とも嫌な予感がしていたのですが、チーフレジデントのM君の前立ちとして入った手術自体は右冠動脈起始異常があって冠動脈のボタンを付けるのに少し苦労した以外は問題なく無事終了。
その後引き続いて心臓移植があったのですが、これも問題なく終了しました。
正夢にならなくて良かった。

これまで術者側(右側)に立ってアテンディングの指導のもとに手術することが多かったのですが、実際レジデントの前立ちのために助手(左側)の位置に立つと、今まで見えなかった事に気づいたり色々と勉強になります。ベテランのアテンディングが「自分で手術する方がよっぽど楽や」と言っていたのが、最近わかるような気がします。
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by ctsurgeon | 2007-02-09 10:32
初執刀
今日はジュニアフェローのS君の初めての執刀症例の前立ちです。
フェローを始めて1ヶ月、もう一人で開閉胸、内胸動脈採取、人工心肺装脱着もできるようになってそろそろという感じでしたが、ちょうど良い症例(ASD patch closure + TV ring annuloplasty)があったので、彼にしてもらいました。
手術は順調に終了。S君は嬉しそうです。
心臓外科医としての第一歩を手伝う事ができて、こちらも少しhappyな気分です。
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by ctsurgeon | 2007-02-08 14:16
26才の再再弁置換手術
今日の症例は26才女性の再々手術(大動脈弁置換術)。

これだけでIv drug user (静注麻薬使用者)というのが頭に浮かんだら、かなりのアメリカ通です。しかし病歴を詳しく聞いたら、ツイてないというか大変な経過です。

Iv drug useによる感染性心内膜炎(注射器から血液内に入ったばい菌が心臓の弁について、弁が破壊される状態)のために、 他院で6年前に僧帽弁置換術(MVR)を受けたのですが、何とその時に人工弁を固定する糸で大動脈弁を傷付けてしまい、術後に強度の大動脈弁逆流が残ってしまいました。

何故かそのまま放置されていたのですが、妊娠を機に心不全が増悪し、出産後最初の手術から3年後に再度大動脈弁置換術(AVR)+僧帽弁置換術(MVR)を受けました。
大動脈弁逆流を放置していたため、すでに重症心不全となっており、後日AICD(体内埋め込み除細動器:ペースメーカーのようなもの)を植えられました。

しかし、運の悪い事に今度はそこからばい菌が入って(麻薬はやめたそうです)、再び感染性心内膜炎をおこしたため、その病院を受診したらしいのですが、「手術不可能」と言われてうちの病院に来たそうです。

心臓は著名に拡大(7cm)しており、心機能(駆出率)は10%(通常は60%くらい)、肺動脈収縮圧は70 mmHg。要するにほとんど心臓が動いてません。ハイリスクで「手術不可能」と言われたのもわかるような気がします。

幸い感染は大動脈弁に留まっているようなので、さっさと大動脈弁置換術だけして切り抜けようとしましたが、思ったより大変でした。3度目の手術で癒着が強度なのと、大動脈基部(root)が小さくてしかも組織がモロモロ。何とか大動脈弁置換術と大動脈基部の再建をして手術終了。補助人工心臓まで頭に入れていたのですが、予想に反して人工心肺からの離脱も少量のカテコラミン1種類だけで問題ありませんでした。麻酔科の先生が頑張ってくれて術直後の経過も良く、とりあえず一安心、思わず前立ちのアテンディングと握手です。

これで心機能が少しでも戻ってくれれば良いのですが、生体弁なのでどちらにしても10年後くらいには4回目の手術を受ける必要があります。その時は機械弁による再2弁置換術になるのか、それとも心臓移植になるのか。。。

写真は映画にも良く出て来るセントラルパークのスケートリンクです。
雰囲気の良い所で、冬のデートにおすすめです。

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by ctsurgeon | 2007-02-07 09:08
Dreamgirls
今日の最高気温マイナス5度。最低気温マイナス10度。
外を歩くのも少し辛くなってきました。
こんな寒い週末は映画館くらいしか行こうという気になりません。

それにしても毎週毎週次から次と新しい映画がリリースされていきます。
日本では気づきませんでしたが、ハリウッドの製作サイクルは本当にすごいです。

この週末はDreamgirlsを観てきました。有名なブロードウェイミュージカルの映画版です。
もうすぐ日本でも封切りされると思いますが、おすすめです。
主役のビヨンセは世の中にこれほどの美人おったんかと思うほどです。
ジェニファーハドソンの歌唱力は主役を完全に圧倒していて、アカデミー助演女優賞間違いなしと言われています。
でも黒人の英語は聴き取るのが難しいです。DVDが出たらまた観たいと思います。

映画館を出たらポケベルがなって、その夜は朝までM君と2人で心臓移植。
日本の医大生の女の子が2人短期研修に来ているので、ドナーチームに同行してもらいました。血流再開して、植えた心臓がゆっくりと動き出したのを見て、

「すっごーい。でも心臓ってかわいいですね。」
僕も本当にそう思います。

「でも心臓移植手術って2人でも出来るんですね。」
日本の大学病院は第2、3助手と術野にたくさん人がいるから、そう思うのも仕方ありません。

ここでは心臓移植手術は全例レジデントケースで、最初に執刀する心臓手術になることもあると説明したら少しビックリしていました。


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by ctsurgeon | 2007-02-06 07:37
お別れ会
シニアフェローのM君のお別れパーティーが近くのバーでありました。

とても性格が良くて皆から好かれていたM君。麻酔科のDr, 手術室の看護師さん、PAの人から彼らのBoyfriend, Girlfriendなどなど、50人近くが集まりました。
苦労を共にした仲間が去って行くのは少し寂しい気がしますが、ここで知り合った多くの友達がこれから全米で活躍していくだろうと思うと、楽しみでもあります。

それにしてもアメリカ人はスキンシップが大好きです。
挨拶はハグ&キスなのですが、恥ずかしくてどうしても挙動不審になってしまいます。本当にキスするのではなく、ほっぺたを合わせてチュっと音を鳴らすだけだということを最近知りました。でも本当にキスしてくる人もいるし。正式にはどうなんでしょうか。


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by ctsurgeon | 2007-02-04 11:30
補助人工心臓(2)
以前(7/27/06)少し触れましたが、ここ数年左室補助人工心臓(LVAD)の話題が多くなってきています。

もともと主に心臓移植までの短期間のつなぎ(Bridge to Transplantation)として数多く使われて来たLVADですが(2005年の1年間で600例以上)、性能の向上とともに長期間の使用に耐えうることがわかってきました。

それでは「心臓移植できない人に永久使用できないか」ということで1998年始められたランダマイズスタディが有名なREMATCHトライアルというものです。
重症心不全患者を内科治療群とLVAD治療群に分けてその成績を比べたら、LVADを入れたほうが生存率でもQOLの面でも優れている事がわかり、FDAは心臓移植非適応患者に対するLVADの永久使用(Destination Therapy)を2002年認可しました。

しかし、これまでは拍動型ポンプといってポンプ本体内にある板を上下することによって、血液を押し出すタイプが主流でしたが、サイズが大きくて小さな体型の人に埋め込むには無理があること、耐久性にまだ問題があること、出血や感染といった合併症の問題が解決されていないことから、積極的に永久使用目的に入れる施設はあまりありませんでした。

ところが、以前紹介したような軸流ポンプ、遠心ポンプという超小型定常流ポンプが最近登場しました。小さいだけでなく、パイロットスタディでは手術の合併症や耐久性は拍動流ポンプより良さそうです。この次世代定常流ポンプの長期成績を調べるPhase 2臨床スタディがすでに始まっています。

また拡張型心筋症の人にLVADを付けて心臓を休ませてあげると、数ヶ月後に心機能が回復してLVADから離脱できる人がたまにいるのですが、生理的な心筋肥大を促す薬を投与することによって、70%以上の患者さんが離脱できたという報告が最近されました(NEJM 2006;355:1873)。それまではせいぜい20%くらいだったので、かなり画期的な報告です。薬だけでなく遺伝子導入や細胞移植なども試みられています。

全米で心不全患者は500万人。毎年30万人が亡くなり、それに対する医療費も300億ドルにのぼるそうです。心臓移植は年間たった2000例。この巨大なマーケットに各医療機器会社が必死になるのも無理はないかもしれません。今後さらに高性能なポンプが出て来たら、人工心臓を付けて歩いている人をしばしば街で見かける(外からはわかりませんが)日が来るかもしれません。


e0088460_894291.jpg左が従来の拍動型LVAD。右が軸流型LVAD。
サイズの違いが良くわかります。
e0088460_810089.jpgこんな感じで体内に埋め込まれています。体外に出ているのは電源コードのみ。ベルトみたいなのがコントローラー。両脇につけているのが電池です。実際多くの人がこの形で退院して日常生活を送っています。
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by ctsurgeon | 2007-02-01 08:16