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緊急開胸
症例数の多い所で働く利点の一つに、めったに起こらない事を経験できるということがあります。
術後合併症でも0.1%の確率で起こる様なことでも、単純計算なら年間100例の病院なら10年に1回ですが、1000例の病院なら年に1回起こることになります。
緊急時の対応では、そういう事態を1度でも経験しているかどうか、ということが非常に重要になってくるので、手術経験数にも増して大切なことではと思います。

2年くらい前ですが、典型的な欧米肥満体型の人の予定バイパス術で、麻酔の導入でいきなり心停止になった事がありました。電気ショックでも戻らず。
一刻も早く人工心肺にのせないとアウトです。

こういう事態(消毒なし、電気メスや吸引なし、メスとハサミのみ)で、とにかく胸骨正中切開をしてダイレクトに心臓にカニュレーションして人工心肺にのせるのと、マッサージしながらソケイ部を開いて大腿動静脈から人工心肺にのせるのと、どっちがいいのか、後のカンファレンスで議論になりました。(先日の冠動脈異常の子は胸骨正中切開しましたけど)

この症例の場合、脂肪が多くて電気メスも吸引もない状態での胸骨正中切開は難しそうだったので、アシスタントに心臓マッサージを続けさせながら、大腿部を切開して人工心肺にのせる事が出来、結局患者さんは元気に退院しました。

でもその後のカンファレンスでは、多くのアテンディングは「いかなる状況でも緊急時は胸骨正中切開をして、ダイレクトに心臓マッサージをしながらポンプにのせるべきだ」という意見が大半でした。それに対するレジデントの意見は様々。

年寄りで大腿動脈の性状が悪い人にあせってカニュレーションすると、解離を起こすリスクは確かにあるし、一刻も早く胸骨正中切開をしてdistendした心臓を露出してダイレクトにマッサージしてやるのが良いという気もします。

一方肥満体型の人の緊急胸骨正中切開は簡単ではなく、消毒もままならないまま開胸するよりも、大腿から人工心肺にのせて安定してからちゃんと消毒して胸開ける方が良いような気もします。大腿を開けている間、別の人が継続的に心臓マッサージできるし。

どちらが良いのか今でも良くわかりません。
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by ctsurgeon | 2007-01-30 14:27
On line gun shop
7月からイラク派遣が決まったM君。隣でインターネットのオンラインサイトを一生懸命見ています。

覗いてみると、武器ショップのサイトです。
M君は軍から支給される分では足らないと聞いて、予備の弾倉とホルスター、GPSを購入するみたいです。「向こうでは銃を持っていなかったら、トイレにも行けない」そうです。

驚いたのはそのオンラインショップの充実ぶり。
ライフルからピストルまで何でもオンラインで注文できます。
安いのは200ドルくらいから、マグナムでも400ドルくらいで買えちゃいます。
amazon.comでCD買うのと大差ない感じです。

「そんなんでちゃんとヒストリーチェックはできるの?」と聞いたら、
’supposed to..., but ' という頼りない返事です。

そういえば同僚の奥さんも357マグナムを持っているそうです。
美人ですが気の強そうな奥さんです。
彼はあまり女性癖が良くなく、「浮気したら、一発で撃ち殺されるで」と周りからささやかれています。
本人はあまり自覚していないようですが。。
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by ctsurgeon | 2007-01-29 05:22
Big saving
少し興味深い症例がありました。

17才のやせ形男性。ジムで運動中に突然の胸痛と呼吸困難を訴えて他院のERに。
普通この病歴だと「気胸?」と思ってしまうのですが、検査の結果は以外にも広範な急性心筋梗塞。何でこの若さで。。

と思ったら、やはり心臓カテーテル検査で左冠動脈起始異常と診断されました。
状態が悪くなり挿管、IABP挿入されてうちの病院のCCUに搬送されてきました。

CCUに到着後しばらく落ち着いていたのですが、自己抜管をきっかけに状態が悪化し、3度の心停止。これは何とかせなあかんと、緊急で手術室に搬送中にまた心停止。心臓マッサージしながら手術台に運び、消毒液ぶっかけてそのまま開胸。何とか人工心肺にのせた後、両心補助人工心臓を装着しました。

心停止時間が長かったので脳障害の可能性が高く、諦めムードだったのですが、翌日意識が回復。もとの心臓はもうダメだろうということで、すぐに心移植のリストに載りました。
しかし2−3日したら自己の心機能が少しづつ戻って来ている事がわかり、人工心臓から離脱できる可能性が出てきたため、移植はホールドに。

手術室に連れて行き、左冠動脈起始異常の修復手術をした後、無事人工心臓から離脱することができました。術後は順調です。

冠動脈起始異常は先天的に冠動脈が通常と違う所から出ており、運動などで心臓に負荷がかかった時に周りの心臓組織に冠動脈が圧迫されて、心臓に血液が行かなくなる事があります。致死性の不整脈が出て突然死することが多く、若い人の運動中の突然死の隠れた原因の一つになっています。今回は医療チームの連携が上手く行き、それにもまして患者さんが幸運だったのでしょう。

こういうBig savingはやはり心臓外科の醍醐味だと思いました。
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by ctsurgeon | 2007-01-27 09:01
Winter has finally come.
今週から急に寒くなってきました。
今日はマイナス7度。さすがに外を歩くのがつらくなってきます。

昨年末〆切の依頼原稿の執筆をすっかり忘れていて、今週中に仕上げないといけなくなり、今週はなるべく手術に入らずに執筆活動です。
毎日手術ばかりであまり勉強する時間がなかったので、色々論文を読んで知識をアップデートする良い機会です。こういう機会がないと論文を読まないのも問題ですが。

先々週日本から若い心臓外科のレジデントの先生が見学に来ました。
アメリカで心臓外科臨床研修をするために、自分で片っ端からアプリケーションの手紙を書いて、面接に呼んでもらった何カ所かの施設にインタビューに来たそうです。
あまり期待してなかったみたいですが、実際に面接を受けると、以外にも話がトントン拍子に進みそうで、本人も少しビックリしていました。
やっぱりこういうのは実際に会いに来て情熱を見せると何とかなるもんなんですね。

通勤途中自宅近くからマンハッタンが見えます。
朝焼けが奇麗です。

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by ctsurgeon | 2007-01-27 07:09
イラク派遣
12/2/06のブログにも書きましたが、チーフフェローをしているM君(陸軍予備役)のイラク派遣が決まりました。チーフ終了直後の今年7月から4ヶ月間だそうです。
彼が属する事になるsurgical teamは前線から少し下がったところに医療テントを設営してそこで、民間人を含むケガ人の治療にあたるとか。
1チームはおよそ20人、そのうち外科医は3−4人で、テント内では全身麻酔の開腹手術などもできるそうです。
未だに爆弾などで兵士だけでなく多くの民間人が犠牲になっており、かなり忙しいそうです。
本人は派遣は仕方ないけど、赤ちゃんと奥さんの事が気になると言っていました。
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by ctsurgeon | 2007-01-21 04:12
プロポーズ
小児心臓外科をローテートしているM君(チーフのM君とは別人です)。
すごく嬉しそうな顔をしています。

聞くと彼女と婚約したとのこと。
凄いのは、ロマンチックなプロポーズを演出するために、わざわざスペインのバルセロナに週末行って来たそうです。
バルセロナの小高い丘に夕陽を見に行こうと彼女を誘い出し、そこで突然プロポーズしたとか。
彼女はビックリしながらも凄く喜んでOKしてくれたそうです。
その時の情景をとても嬉しそうに語ってくれました。
聞いているこっちの方が恥ずかしくなります。

さすがアメリカ人です。
プロポーズのためだけにNY−スペインを2日で往復するなんて、、日本人男性の僕には考えられません。
幸せな彼女です。
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by ctsurgeon | 2007-01-18 05:12
Letters From Iwo Jima
今年の冬は異常なほどの暖冬です。
先週末の最高気温は何と20度! 上半身裸で走っている人もいました。
暖房代がかからない、というより暑いので部屋の窓を開けっ放しです。

ということで週末にスキーにも行けないので、昨日は映画に行ってきました。
日本でも話題の「硫黄島からの手紙」。残念ながら全米同時公開ではなく、昨日やっと地元で公開になりました。

映画館はほぼ満員です。
細かい感想は抜きにして、終了後体に重しを載せられたようにしばらく動けませんでした。
周りのアメリカ人も終了のテロップが流れている間も無言で座ったままの人が多かったです。

これまでハリウッド映画に出てくる敵国日本兵は狂信的な殺人ロボットみたいな描写ばかりで、そういうステレオタイプな認識をしているアメリカ人も多いかもしれません。
そういう人には「カミカゼ」や「バンザイ突撃」はやはり理解不能でクレージーな行動のように映るでしょう。

この映画は絶望的な状況の中で他に選択肢が無かった日本兵の気持ちを良く描写していると思いました(実際はもっと悲惨だったんでしょうけど)。
こういう映画が日本でなくハリウッドで作られたというのは驚きです。
アメリカでの評判はかなり良いようなので、今後じわじわと人気が出てくるかもしれません。
機会があればアメリカ人の友達にも感想を聞いてみたいと思います。

今日は気持ちを入れ替えてカーネギーホールにコンサートを聴きに行ってきました。
METオーケストラ、レヴァイン指揮のブラームス交響曲3番とベートーベンバイオリン協奏曲。
素晴らしい演奏で、これも終了後しばらく席を立つのがもったいないほどした。

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by ctsurgeon | 2007-01-15 12:52
安息日
去年のクリスマスイブに心臓移植した患者さん。
術後経過は順調だったのですが、心臓の周囲に血液が溜まるいわゆる心タンポナーデの兆候があったので、金曜の晩に開窓ドレナージ術という簡単な手術をすることになりました。

手術室で承諾書を取ろうとすると、「サインできない」とのこと。
前にも書きましたが、いわゆる超正統派のユダヤ教信者(たまに見かける黒帽子に黒スーツ、長いヒゲの人たちです)で、金曜の晩から安息日に入るので、物を書いたり、何かのスイッチを入れたりという事が一切できないらしいです。トイレに入っても水も流したらダメとか。
仕方なくverbal consentということにしました。

24日のブログ記事の後指摘されたのですが、当たり前のことですが彼らはクリスマスを祝いません。
手術後いかにもそれとわかる全身黒づくめの大勢の親族の人達に「ビッグなクリスマスプレゼントになりましたね」と、嬉しそうに言ったのは大間抜けでした。
ちょっと気を悪くしたかなと後から少し心配になったのですが、それからも診に行く度に、手を握りながら「Docの手にはGodがついてくれているから安心です。」みたいな事を言ってくれるので、どうやら大丈夫のようです。
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by ctsurgeon | 2007-01-07 08:47
訴訟
この前オフィスでメールのチェックをしていたら、やたら分厚い郵便物が。
弁護士事務所からです。
知らないうちに訴えられていました。
2回目です。

1回目は、たまたま病院当直していた時に他院から搬送されてきた術後患者さんが、夜間に突然急変して亡くなった事例。弁護士さんと色々やりとりしたりしたのですが、結局我々のした処置には何の過ちもなく、搬送してきた前医の処置に問題があるということで、我々に対する訴訟は取り消しになって一件落着しました。

今回の症例は、ちょっと???です。
非常に難しいハイリスク症例だったのですが、手術はうまくいって患者さんも元気に退院したはずなんですが。。。
訴状を読んでみると、ICUにいる間に後頭部にHair lossができたとのこと。
いわゆる円形脱毛症? 
それに対してインフォームドコンセントが不十分であったというような内容です。
同じく訴えられているアテンディングとも話をしたのですが、苦笑いです。

訴訟がらみの問題は、すぐに病院のRisk managementに丸投げして、彼らが弁護士の手配など全てtake careするみたいです。何せ訴訟大国ですから、その辺はぬかりありません。でも日本のように刑事責任を問われることは、よほど故意で悪いことをしない限りはありません。

写真:
12/29の記事のつついさんのコメントにあった油絵です。
カフェテリアの入り口の横に貼られています。
CABG? 移植? 良くわかりません。

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by ctsurgeon | 2007-01-03 13:59
仕事始め
明けましておめでとうございます。

年末年始はスキーに行こうと思っていたのですが、暖冬で雪がないので仕方なく家でダラダラしていました。
日本のビデオ(結婚できない男:面白いです)を見たり、映画に行ったり。。
年末に手術した患者さんの事が少し気になっていたのですが、せっかくオフにしているので、あえて病院に行かなかったら、案の定初夢に出てきました。
知らない間に状態が急変していて、見に来なかった事を責められている夢でした。
何かすっきりしない正月です。

今日2日から、仕事が始まりました。
今年の第1例目はまたLVAD explant / Heart transplant。
最近心臓移植が多いような気がします。

以前飛行機が5機編隊を組んで飛行機雲で空に広告の文字を描いている写真を載せましたが(8/13のブログ参照)、今回は1機の飛行機が文字を描いています。
旋回したり真っすぐ飛んだり、大変そうです。
風のある日は無理でしょうね。


e0088460_2475174.jpg大空を縦横無尽に飛びながら文字を描いて行きます
e0088460_248882.jpg「Who」と書いているみたいです。どう続くのでしょうか?
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by ctsurgeon | 2007-01-03 02:53