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無題
6回の心臓手術をsurviveしてやっと心臓移植にたどりついた患者さん。
術後も大変な経過で、何度かアレストになったりしながらも、そのたびに蘇生されて生き延びて、やっと一般病室にあがれたと思ったら、しょうもない事でつまづいて、結局帰らぬ人となってしまいました。
本当あともう一息というところで、、何ともやるせない気持ちです。

あれから2週間たって、偶然家族の人と病院の廊下でばったり会いました。
自分が手術しておきながら急変の時に家にいて家族と話しできかったこともあり、何となく後ろめたい気持ちもあって、「このたびは。。」とありきたりな言葉しか出てこなかったのですが、奥さんは何も言わず涙を流しながらハグして来ました。
病院で世話になった人たちに挨拶に来ていたらしいです。
最近日本での医療事故ニュースのことが刷り込まれていて、「こんな時期に病院に来るのは訴訟の準備でもしているのかな」と一瞬思った自分が非常に恥ずかしく思いました。
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by ctsurgeon | 2006-07-08 13:11
新人フェローデビュー
水曜日から新しいジュニアフェローが来ました。
以前書いたレバノン出身の女医さんです。
いきなり初日から開胸、カニュレーション(人工心肺にのせるために心臓に管を装着すること)、内胸動脈グラフト取りを教えます。
早く一人でできるようになってもらわないとこっちの負担が減らないので、「まず見て、第一助手して、それから」なんて悠長な事はしてられません。まだほとんど心臓手術に入った事もない、人工心肺の回路もあまり理解していない人に、カニュレーションをさせるのは日本的には無茶ともいえますが、これがアメリカ式なのだから仕方ありません。

いきなり初日は僕が指導係。
1例目。大動脈をメスで切開して、そこに管を入れるのですが、切開が小さくてとても入らず、慌てて血だらけで見えない大動脈にメスで切り足そうとするので、あわてて制止。結局自分がすることに。
2例目。今度は切開が大きすぎて一瞬にして血が飛び散り(大動脈に穴をあけると、血圧で血が天井まで届くくらい噴出します。)、顔面シャワー状態。途中交代。
こちらも結構ひやひやです。

彼女は3列の手術室を渡り歩き、ひたすら「開胸」「カニュレーション」「閉胸」を繰り返しています。
週2回の当直もあり、そうとうこたえているはずですが、さすがに弱音は吐きません。
頑張ってもらいたいです。
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by ctsurgeon | 2006-07-08 12:51
プロフェッショナル
以前NHKの「プロフェッショナル」という番組をビデオで見ました。
岡山大学心臓外科の佐野教授が出ていました。
小児心臓外科の第一人者で、特に左室低形成症候群に対するノルウッド手術という難手術、以前は日本でははほとんど助けられなかった手術を8割以上の救命率までに持って行った、スーパーサージャンです。その術式はアメリカでもNorwood-Sano operationとして知られており、我々の施設でもその手術の有用性について臨床研究が行なわれています。
彼がプロフェッショナルとは何かという問いかけに対して
「自分の仕事に誇りと責任をもつこと。誇りだけで責任を取れない人は駄目。そのためにはやっぱり努力しないといけない。」
非常に重い言葉です。
何かあれば自分に言い聞かせるようにしています。
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by ctsurgeon | 2006-07-03 13:01
Medical Examiner
日本で以前福島の産科医が妊婦死亡の件で逮捕され大問題になりましたが、訴訟大国のアメリカでさえ病院内の死亡症例に関していきなり警察、検察が介入してくる事はまずありません。手術死亡や医療過誤が疑われるような死亡症例に関しては、Medical Examinerという第三者の医師が、死因の調査をすることになっています。そういう症例は死亡したあと、チューブ類を抜く事は許されず、Medical Examinerにそのまま引き渡されます。 彼らはDoctorですが、中立的立場を取る第三者機関なので、実際医師に過失があったかどうかを客観的に判定するようです。(詳しい事はよくわかりませんが。。)
やはり医療において医師の過失というのは専門家でなければ、判断する事は困難で、全く医療に素人の検察官が「癒着胎盤をハサミで剥がしたことがけしからん」と医学的な判断を下して医師を逮捕してしまうことは、やはり異常としか思えません。
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by ctsurgeon | 2006-07-03 12:37
貧乏性
7/4(火)が独立記念日なので、月曜を休みにして4連休にしたのですが、これといって休みの計画が立たず、結局ダラダラ週末を過ごしています。
暑いので外に出歩く気もおこらず、近くの日系スーパーで大九州展というのをやっていたので、暇つぶしに行って、豚骨ラーメンと鯖寿司を食べて、日本のビデオを借りて。。。いったい何をしているのやら。

昔から週末家でじっとしているのが非常に苦痛に思うタイプです。
平日いくら忙しくて週末はゆっくりしたいと思っていても、いざ週末になって半日も家にいると、暇でイライラしてきます。そういう意味では貧乏性なのかもしれません。多分親譲りだと思います。
病院に電話すると、明日は準休日体制にもかかわらず心臓移植を含めて4例ほど手術予定があるとのこと。とりあえず明日は病院に行ってきます。
そういうところが、やはり日本人か。
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by ctsurgeon | 2006-07-03 12:19
分業制
日本の主治医制とは違い、アメリカの医療は分業制です。
たとえば心臓手術後の患者Aさんを例にとると。
Aさんは冠動脈バイパス手術を受けたものの、術後に急性腎不全になり、肺炎も併発、現在気管切開され経管栄養されています。というありがちな場合。
日本では主治医がほとんど一人でtake careしますが、アメリカの場合カルテには下記のドクターの記載が並びます

1)心臓外科医
2)循環器内科医(以上が一応の主治医)
3)ICUスタッフ(アテンディング)
4)腎臓内科医(腎不全に対して)
5)感染症内科医(肺炎に対して)
6)呼吸器内科医(肺炎から来る呼吸障害)
7)呼吸器外科医(気管切開の管理)
8)栄養士(経管栄養)
9)サイコテラピスト(ICUシンドロームに対して)

全てコンサルト(共観)という形で、彼らはそれぞれの分野で勝手に薬の指示を出して、コンサルテーションフィーを請求するという形になっています。カルテの最後には診察に何分費やしたか、ということが書いてあり、その時間によって診察料を請求するみたいです。
それぞれの分野で専門的な治療を受けられるという利点もあるのですが、何かあった時の訴訟対策という面もあります。一番困るのはそれぞれ勝手に診察してオーダーしているので、何が行なわれているのか全体を把握しにくいことです。一応外科医と内科医は主治医という立場にあるので把握しなければと思うのですが、彼らの汚いカルテ(だいたいアメリカ人の手書きの英語はほとんど汚くて解読困難)を判読するのは、なかなか大変です。
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by ctsurgeon | 2006-07-01 14:18
チーフフェロー
今月からチーフフェローになったA君。この3週間でこなした心臓手術が何と44例!(全て開心術術者)。平日だけで計算すると毎日3例ずつの計算になる。しかもすべて皮切から閉胸まで一人でするので、この数は驚異的である。
さすがに今日は少し疲れ顔だったので、「もうお腹いっぱいやろ?」と聞いみたら、笑って「まだまだ、I'm still hungry」と。まさにモンスターである。
ちなみにこちらは今月32例で結構しんどかったのだけど、彼の前ではさすがに何も言えませんでした。
明日からは新しいJunior fellowが来ます。いきなり土曜日当直なのは少し可哀想か。
新しいフェローは久しぶりの女性フェロー。レバノン出身の美人。しかも子持ち。
ゴミ溜めのようだったfellow's officeを彼女のために皆で奇麗に掃除しました。
これからどうなるか楽しみです。
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by ctsurgeon | 2006-07-01 07:54
DNR
日本で少し前に末期患者の人工呼吸器を家族の同意の元に止めた医師の行為が問題になったことがありました。家族の同意が口頭だけで書面にしていなかったのが問題だったみたいです。

アメリカでは大きな手術や病気の治療の前に、どこまで治療をしてほしいのか、また自分が意思表示できない時に、誰が法的に代弁者になるのか(Health care proxy)というような事をあらかじめ文書にしておくのが一般的です。
よく目にするのがDNR (Do Not Resuscitate: 緊急時の蘇生処置をしないこと)formです。
無駄な延命処置を避ける意味でも、日本で起きたような問題を避ける意味でも重要な書類ですが、???と思う時もあります。

以前心臓手術を受けてまだ5日目くらいの患者がICUで突然心室細動(心停止)になりました。ふつうなら電気ショックですぐ戻るはずですが、それをしようとしたら、突然ICUのスタッフに「この患者はDNRにサインしているから電気ショックも心臓マッサージもダメ」といわれました。といっても手術後まだ5日目、「周術期に不整脈が起こる事は良くあるのに、その治療がダメなら何でこの患者は手術を受けたんや」と先輩外科医がICUスタッフに食い下がったのですが、「ダメなものはダメ」。結局何もできないまま、目の前で患者が死んで行くのを見るしか無いという、なんとも理不尽でやるせない経験をしました。

医師の裁量に偏りすぎると日本のような問題が起こるし、患者との契約事項にこだわれば後者のような事も起こりうる。難しいです。
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by ctsurgeon | 2006-07-01 04:20