2007年 01月 30日 ( 1 )
緊急開胸
症例数の多い所で働く利点の一つに、めったに起こらない事を経験できるということがあります。
術後合併症でも0.1%の確率で起こる様なことでも、単純計算なら年間100例の病院なら10年に1回ですが、1000例の病院なら年に1回起こることになります。
緊急時の対応では、そういう事態を1度でも経験しているかどうか、ということが非常に重要になってくるので、手術経験数にも増して大切なことではと思います。

2年くらい前ですが、典型的な欧米肥満体型の人の予定バイパス術で、麻酔の導入でいきなり心停止になった事がありました。電気ショックでも戻らず。
一刻も早く人工心肺にのせないとアウトです。

こういう事態(消毒なし、電気メスや吸引なし、メスとハサミのみ)で、とにかく胸骨正中切開をしてダイレクトに心臓にカニュレーションして人工心肺にのせるのと、マッサージしながらソケイ部を開いて大腿動静脈から人工心肺にのせるのと、どっちがいいのか、後のカンファレンスで議論になりました。(先日の冠動脈異常の子は胸骨正中切開しましたけど)

この症例の場合、脂肪が多くて電気メスも吸引もない状態での胸骨正中切開は難しそうだったので、アシスタントに心臓マッサージを続けさせながら、大腿部を切開して人工心肺にのせる事が出来、結局患者さんは元気に退院しました。

でもその後のカンファレンスでは、多くのアテンディングは「いかなる状況でも緊急時は胸骨正中切開をして、ダイレクトに心臓マッサージをしながらポンプにのせるべきだ」という意見が大半でした。それに対するレジデントの意見は様々。

年寄りで大腿動脈の性状が悪い人にあせってカニュレーションすると、解離を起こすリスクは確かにあるし、一刻も早く胸骨正中切開をしてdistendした心臓を露出してダイレクトにマッサージしてやるのが良いという気もします。

一方肥満体型の人の緊急胸骨正中切開は簡単ではなく、消毒もままならないまま開胸するよりも、大腿から人工心肺にのせて安定してからちゃんと消毒して胸開ける方が良いような気もします。大腿を開けている間、別の人が継続的に心臓マッサージできるし。

どちらが良いのか今でも良くわかりません。
[PR]
by ctsurgeon | 2007-01-30 14:27