2006年 10月 07日 ( 1 )
手術の作法
最近投稿が滞っています。

ジュニアフェローのMさんが、3ヶ月の成人心臓外科ローテを終えて小児心臓外科に移りました。代わりに2年目のM君がサブチーフとして合流し、少し楽になりました。
結局Mさんは3ヶ月で独り立ちすることができなかったため、僕に回ってくる症例が全く減らず結構へとへとになっていたので、ホッとしました。

うちの施設はアテンディングサージャンは心臓が止まっている間しかいないので、研修を開始してすぐのジュニアフェローでも1か月くらいしたら一人で開胸、人工心肺離脱、閉胸できることを求められます。彼女はそこまで到達できなかったのですが、自分でもそれが気になるらしく少し落ち込んでいました。

チーフフェローのA君も少し心配していて、彼を交えてMさんと話をしました。彼も技術的なことよりも、前回のブログ書いた様に「人の手術を見て真似ようとしない」という意識の問題だと言っていました。

心臓手術には色々ありますが、心臓を止めている間以外(開胸、人工心肺装脱着、閉胸)の手技は基本的に同じです。その手順を覚えることから始まるのですが、その一つ一つのステップはいわば手術のお作法のようなもので、常に一緒です。運針の仕方から始まって覆い布の掛け方のようなつまらない事までいつも同じ様にすること、ルーティーンを守るということは、いざ心臓を止めて手術に集中するための儀式のようなもので、結構重要であることが僕も最近わかったのですが、彼女はそれをあまり理解していないみたいでした。

前立ちをするのは、多分自動車教習所の助手席に座っている教官みたいなもので、運転している生徒本人はわかっているつもりでいても自分と違うやり方、タイミングで運転(手術)されると見ている方は不安になります。特に心臓手術はささいな事で大事故になるので、例えば大動脈に人工心肺の管を入れる(カニュレーション)の時にメスの角度が自分が見せた通りにしてなかったりすると、「ちょっと待った!!」という事になります。止血の手順なども自分と違う順番でされると、見ていてとても気持ち悪くなります。

彼女のいい分は「アテンディングによってやり方が違うので混乱する」「こちらの方が自分にはやりやすい」ということでしたが、そういう理屈抜きに各アテンディングの一見つまらないこだわりを理解し、彼らの作法を完全に真似できるようにしないと手術は回ってこないよと言う事をA君と2人で言い聞かせて彼女も納得したようです。

来年サブチーフとして帰ってくる時はどうなっているでしょうか。
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by ctsurgeon | 2006-10-07 09:02