2006年 07月 01日 ( 3 )
分業制
日本の主治医制とは違い、アメリカの医療は分業制です。
たとえば心臓手術後の患者Aさんを例にとると。
Aさんは冠動脈バイパス手術を受けたものの、術後に急性腎不全になり、肺炎も併発、現在気管切開され経管栄養されています。というありがちな場合。
日本では主治医がほとんど一人でtake careしますが、アメリカの場合カルテには下記のドクターの記載が並びます

1)心臓外科医
2)循環器内科医(以上が一応の主治医)
3)ICUスタッフ(アテンディング)
4)腎臓内科医(腎不全に対して)
5)感染症内科医(肺炎に対して)
6)呼吸器内科医(肺炎から来る呼吸障害)
7)呼吸器外科医(気管切開の管理)
8)栄養士(経管栄養)
9)サイコテラピスト(ICUシンドロームに対して)

全てコンサルト(共観)という形で、彼らはそれぞれの分野で勝手に薬の指示を出して、コンサルテーションフィーを請求するという形になっています。カルテの最後には診察に何分費やしたか、ということが書いてあり、その時間によって診察料を請求するみたいです。
それぞれの分野で専門的な治療を受けられるという利点もあるのですが、何かあった時の訴訟対策という面もあります。一番困るのはそれぞれ勝手に診察してオーダーしているので、何が行なわれているのか全体を把握しにくいことです。一応外科医と内科医は主治医という立場にあるので把握しなければと思うのですが、彼らの汚いカルテ(だいたいアメリカ人の手書きの英語はほとんど汚くて解読困難)を判読するのは、なかなか大変です。
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by ctsurgeon | 2006-07-01 14:18
チーフフェロー
今月からチーフフェローになったA君。この3週間でこなした心臓手術が何と44例!(全て開心術術者)。平日だけで計算すると毎日3例ずつの計算になる。しかもすべて皮切から閉胸まで一人でするので、この数は驚異的である。
さすがに今日は少し疲れ顔だったので、「もうお腹いっぱいやろ?」と聞いみたら、笑って「まだまだ、I'm still hungry」と。まさにモンスターである。
ちなみにこちらは今月32例で結構しんどかったのだけど、彼の前ではさすがに何も言えませんでした。
明日からは新しいJunior fellowが来ます。いきなり土曜日当直なのは少し可哀想か。
新しいフェローは久しぶりの女性フェロー。レバノン出身の美人。しかも子持ち。
ゴミ溜めのようだったfellow's officeを彼女のために皆で奇麗に掃除しました。
これからどうなるか楽しみです。
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by ctsurgeon | 2006-07-01 07:54
DNR
日本で少し前に末期患者の人工呼吸器を家族の同意の元に止めた医師の行為が問題になったことがありました。家族の同意が口頭だけで書面にしていなかったのが問題だったみたいです。

アメリカでは大きな手術や病気の治療の前に、どこまで治療をしてほしいのか、また自分が意思表示できない時に、誰が法的に代弁者になるのか(Health care proxy)というような事をあらかじめ文書にしておくのが一般的です。
よく目にするのがDNR (Do Not Resuscitate: 緊急時の蘇生処置をしないこと)formです。
無駄な延命処置を避ける意味でも、日本で起きたような問題を避ける意味でも重要な書類ですが、???と思う時もあります。

以前心臓手術を受けてまだ5日目くらいの患者がICUで突然心室細動(心停止)になりました。ふつうなら電気ショックですぐ戻るはずですが、それをしようとしたら、突然ICUのスタッフに「この患者はDNRにサインしているから電気ショックも心臓マッサージもダメ」といわれました。といっても手術後まだ5日目、「周術期に不整脈が起こる事は良くあるのに、その治療がダメなら何でこの患者は手術を受けたんや」と先輩外科医がICUスタッフに食い下がったのですが、「ダメなものはダメ」。結局何もできないまま、目の前で患者が死んで行くのを見るしか無いという、なんとも理不尽でやるせない経験をしました。

医師の裁量に偏りすぎると日本のような問題が起こるし、患者との契約事項にこだわれば後者のような事も起こりうる。難しいです。
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by ctsurgeon | 2006-07-01 04:20