心臓外科医の給料
毎月「confidential」と書かれた封筒が各アテンディングサージャンに配られます。

中には手術手技料(Surgeon's fee)をいくら取ったかということが、月毎に詳しく書かれています。
おそらく(?)僕たちの稼いだ手術手技料はデパートメント(医局)にプールされ、下にあげた100%出来高の人以外のサラリーとして分配されるのだと思います。

外科医の創り方(1/21/07)にもありましたが、外科医の給料算出法は大きく3つあります。

1)100%出来高:有名外科医やプライベート病院の外科医はこのパターンが多いと思います。保険会社から直接手術料が外科医に入ります。手術をすればするほど儲かるので、トップサージャンの稼ぎはミリオンになります。有名ベテラン外科医で年に数回モナコに出張手術しに行って大金を稼いで来る人もいます。

2)出来高+固定給:中堅どころはこのパターンが多いと思います。年俸制なので各アテンディングサージャンは自分が年間いくら稼いだかという資料をもって、デパートメントのチーフと年俸交渉します。だから皆一生懸命自分の症例を集めようとします。知り合いの若手外科医で手術しまくって給料を倍増させた強者もいます。(外からヘッドハンディグされている話をちらつかせて年俸交渉したようです。日本で教授相手にそんな事したら大変です)

3)100%固定給:僕たちのような下っ端は固定給です。インセンティブはなく日本の勤務医と同じです。

要は自分の力で患者を集めてナンボの世界です。
大学病院勤務医といっても、そういう点では開業医と同じです。
日本と違い主治医という意味は、その外科医が手術手技料を請求し手術の全責任を持つということなので、フェローなどの研修医が主治医になることは有り得ません。

ちなみに、ここ数年フェローを卒業して様々な病院のアテンディングサージャンとして出ていった人達の初任給は25万ドル前後です。
心臓外科医全体の平均年収は45万ドルくらいだそうです。

日本と比べてはるかに高給ではありますが、彼らは高い授業料を払ってMedical Schoolに行き、その後平均10年くらいは安月給で下積みし競争を勝ち抜いてようやく心臓外科医として独り立ちしたのだから、彼らにしてみれば当然の額とも言えます。専門性の高さ、仕事のハードさ、リスクの高さなどを考えるともっと高くても良いと思っているみたいです。その証拠に、この待遇でも最近はもっとQOLが良い他の科に人が流れて、心臓外科の人気は落ちています。

言い尽くされていることですが、同じように、いやもっと大変な下積みをして、仕事も外科医+術後管理医+PA+時には看護師くらいの働きをし、訴訟リスクももはやアメリカ並になった日本の心臓外科医の待遇が低すぎるのでしょう。

大学病院を始めとした日本の公立病院の医師の給与は基本的に卒後年数で横並びに決められています。忙しい科で頑張っても給料が増える訳でもなく、症例を増やせば増やすほど、リスクが高くなり、自分の生活を犠牲にしていくという皮肉な結果になっています。そんな状況であえて心臓外科などのきつい科を選ぶ人達は、お金の為でなく純粋にやりがいを求めている人がほとんどですが、そういう医師の良心に現在の医療制度がつけ込んでいるような気がします。アメリカの医療制度が健全だとは思いませんが、日本の制度も?と思います。

日本でも医師の給与にインセンティブを加えるという話が出て来ているようですが、どうなるんでしょうか。
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by ctsurgeon | 2007-02-20 00:14
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