補助人工心臓(2)
以前(7/27/06)少し触れましたが、ここ数年左室補助人工心臓(LVAD)の話題が多くなってきています。

もともと主に心臓移植までの短期間のつなぎ(Bridge to Transplantation)として数多く使われて来たLVADですが(2005年の1年間で600例以上)、性能の向上とともに長期間の使用に耐えうることがわかってきました。

それでは「心臓移植できない人に永久使用できないか」ということで1998年始められたランダマイズスタディが有名なREMATCHトライアルというものです。
重症心不全患者を内科治療群とLVAD治療群に分けてその成績を比べたら、LVADを入れたほうが生存率でもQOLの面でも優れている事がわかり、FDAは心臓移植非適応患者に対するLVADの永久使用(Destination Therapy)を2002年認可しました。

しかし、これまでは拍動型ポンプといってポンプ本体内にある板を上下することによって、血液を押し出すタイプが主流でしたが、サイズが大きくて小さな体型の人に埋め込むには無理があること、耐久性にまだ問題があること、出血や感染といった合併症の問題が解決されていないことから、積極的に永久使用目的に入れる施設はあまりありませんでした。

ところが、以前紹介したような軸流ポンプ、遠心ポンプという超小型定常流ポンプが最近登場しました。小さいだけでなく、パイロットスタディでは手術の合併症や耐久性は拍動流ポンプより良さそうです。この次世代定常流ポンプの長期成績を調べるPhase 2臨床スタディがすでに始まっています。

また拡張型心筋症の人にLVADを付けて心臓を休ませてあげると、数ヶ月後に心機能が回復してLVADから離脱できる人がたまにいるのですが、生理的な心筋肥大を促す薬を投与することによって、70%以上の患者さんが離脱できたという報告が最近されました(NEJM 2006;355:1873)。それまではせいぜい20%くらいだったので、かなり画期的な報告です。薬だけでなく遺伝子導入や細胞移植なども試みられています。

全米で心不全患者は500万人。毎年30万人が亡くなり、それに対する医療費も300億ドルにのぼるそうです。心臓移植は年間たった2000例。この巨大なマーケットに各医療機器会社が必死になるのも無理はないかもしれません。今後さらに高性能なポンプが出て来たら、人工心臓を付けて歩いている人をしばしば街で見かける(外からはわかりませんが)日が来るかもしれません。


e0088460_894291.jpg左が従来の拍動型LVAD。右が軸流型LVAD。
サイズの違いが良くわかります。
e0088460_810089.jpgこんな感じで体内に埋め込まれています。体外に出ているのは電源コードのみ。ベルトみたいなのがコントローラー。両脇につけているのが電池です。実際多くの人がこの形で退院して日常生活を送っています。
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by ctsurgeon | 2007-02-01 08:16
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