MICS
先日ロボット手術のことを書きましたが、今回はMICS (Minimally Invasive Cardiac Surgery :低侵襲心臓手術)に触れたいと思います。

胸の真ん中を30cmくらい縦に切って、胸骨(胸板の骨)を2つにわって、胸を観音開きにする従来の方法(胸骨正中切開法)から、何とか傷を小さく、また胸骨を切らず手術できないかと、10年くらい前から色々なアプローチが考え出されました。
その代表的なのが胸骨を上半分、または下半分だけ切る方法(Hemisternotomy)、胸骨をまったく切らずに右(または左)肋骨の間を空ける方法(Minithoracotomy)です。いずれも7cmくらいの傷で手術できます。

傷が小さいと体に対する侵襲も小さいだろうということで、「低侵襲」という名前がつけられましたが、実際のところは美容上のメリットがほとんどです。しかし胸骨を全部切らないということから、心臓手術の一番やっかいな術後合併症である胸骨感染やSternal dehiscenceを予防できるメリットはあります。

うちの施設では色々なMICSをしているのですが、一番数多くしているのが、右小開胸による僧帽弁手術です(ASD,Myxomaなども同じアプローチです)。男性なら右乳首の下から外側に、女性なら乳房の下縁の溝にそって7−10cm皮膚を切開し、そこから手術します。日本では慶應大学病院がこの手術で有名ですが、彼らがハートポートシステムといった特殊な人工心肺システムを使っているのに対して、そういう特殊なシステムや内視鏡、特殊な結紮器具などを一切使わないのが我々のアプローチの特徴です。少し専門的ですが大動脈と上大静脈のカニュレーションは術野から、下大静脈は主に大腿静脈から尖刺で行ないます。

特別な手技、装置を極力避けるというのは、ルーティーンで手術をしていく為には結構重要なことですが、この方法だと普通の胸骨正中切開法と比べても大して時間がかかりません。普通の僧帽弁手術なら全部で3時間くらいで終わってしまいます。僧帽弁手術、成人ASDなどの9割近くはこのアプローチでしていて、僕自身も200例以上してきましたが、特に女性で乳房の大きな人は傷が完全に見えなくなるので、結構おすすめです。
[PR]
by ctsurgeon | 2006-12-10 01:27
<< NYのクリスマス(2) ロボット手術 >>