昨日は2件の手術が終了したあと、引き続き心臓移植がありました。
執刀はサブチーフのM君。CABG後の再手術症例だったのですが、ジュニアフェローの時(1年前)に数例経験があるというので、まあ大丈夫だろうということになりました。何よりも心臓移植は再手術の剥離の練習になるので(心臓を傷つけてもどうせ取ってしまうので)、彼には良い経験になります。 開始時僕はまだ他の手術中だったので、心臓の剥離まではチーフフェローのA君が前立ち、その後は寝違いで背中が痛いので帰りたいと言う彼の代わりに僕が前立ちに入ります。 でもM君の機嫌がすこぶる悪い。 当直明けの夜に手術に入らされたことと、その晩はハロウィーンだったので家族で何かする予定があったみたいです(手術中看護婦さんに頼んで、奥さんに言い訳の電話をしてもらっていました)。チーフのA君の寝違いも娘とハロウィーンパーティーするための仮病ではないかと、よけいな詮索まで入り手術中もブリブリ怒っています。遠距離ドナーで虚血時間が長いのと、本人が早く帰りたい(?)ためか、どうしても急ごう急ごうとします。 そんな時は物事はうまくいかないもので、移植後に大動脈の吻合部が裂けてしまいました。大動脈を深く剥離しすぎたためで修復のしようもなく、もう一度心臓を止めて吻合を一からやり直します。この吻合を失敗するとかなり大変なことになるので、彼には悪いですがピッチャー交代で彼を助手に回します。 すると、また機嫌が悪くなる。 「大動脈の剥離をもっと丁寧にしたらよかった」とか、「もっと性状の良い所で吻合すべきだった」とか、言っても始まらない事をぶつぶつ言っています。 案の定その後も出血傾向がひどくて、止血に難渋します。 主治医のアテンディング(といっても全然手術には入らない)に、「彼はエキサイトして注意力散漫になってるから、注意して見たってや」と頼まれたので、閉胸できるくらいになるまで止血に付き合って夜中に帰宅しました。 すると4時間後の朝方にICUから電話が。 やはり術後出血。再開胸となりました。 出血点は、閉胸に使う胸骨ワイヤーからの出血。。。 こんなことなら、閉胸まで残っていたら良かった。。 心臓手術は時間が限られているのと、ストレスのかかる場面が多いので、どうしてもイライラすることがありますが、個人的には外科医がそれを表に出してもチーム全体のパフォーマンスが上がる訳ではなくむしろ逆になる場合が多いので、極力手術中は心を平静にしようと努めています。怒鳴りまくる心臓外科医はアメリカには少なく、特にうちの施設の手術室の雰囲気は良いのですが、手術中ひたすら冗談とか世間話をしまくる人もいて、それはそれで困ります。僕自身はじっと黙って手術するのが好きです。 少し前に病院のロビーで病院の歴史が紹介されていました。 上の絵は1825年の病院の様子。 下は1900年頃の看護学生の写真です。説明によれば彼女らは全員病院内の寮で生活し、訪問者も許可されないなど厳しい規律を課されていいたそうです。また既婚者は看護学校に行けなかったそうです。
by ctsurgeon
| 2006-11-02 03:13
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